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複雑系市場分析 Santafe laboratory

複雑系市場分析と経営情報システム ーマーケテイング・サイエンスー

               日本福祉大学情報社会学部 助教授 武上 幸之助

(目次)

 序)「複雑系」カテゴリーの仮想市場分析への導入の可能性

1.複雑系市場分析

(1)数量化による定量分析限界。

(2)確率論による定性化の導入:モンテカルロ手法による複雑系市場分析

2.経営情報システム:SISへの導入

結語)

(本文)

序)

 NPOである米国サンタフェ研究所が中心となり所謂「複雑系」と呼ばれる分析アプローチが研究発展を遂げている。経営科学にも影響を持ちつつあるこの「複雑系」的手法を、本稿は市場分析に応用すべく試みようとするものである。経営科学の分析手法は数値処理手法の要求から定量分析が主流であり、定性的な分析は其の性質から分析が非常に困難である。

 本稿では市場分析においての定量分析の限界と確率論的モンテカルロ手法による定性分析導入の可能性を分析する。さらに今後のSISへの「複雑系」の導入を論じた。

 市場において製品はこれを媒体とした生産者の供給と消費者の需要の均衡点で購入決定されるが、製品を供給する企業間の競合が著しくなると、さまざまな経営戦略(市場戦略)が講じられるようになり、所謂経済的合理性とは次元の異なる手法が市場に導入されるようになる。

 市場のフレームワークをここでは仮想市場とし、限られた条件の下で、企業が競争戦略手法を行使した場合の企業行動と市場成果を分析した。さらに経営戦略の目的とする経済性をここで再確認し、経営戦略として市場に手法が導入された結果を分析し考察する。

1.「複雑系」市場分析 -定量分析の限界―

「複雑系」と呼称される分析手法が、大きな影響を持つようになり、本来は自然科学で利用される機会の多かった手法が経営手法にも採用されている。その骨子となる概念は、以下に掲げるように極めて複雑な要因で成り立つ事象を可能な限り細分化して単純化した要因を分析して、この成果を総合的に敷衍し帰納的に事象を解析する手法である。いわばデカルト的な分析手法であり、自然科学における分析手法としての再現性などに利点となる特徴がある。この要因の単純化の手法には経営科学、行動科学、オペレーションズリサーチ等が多く利用される。特に再現方法としてのシュミレーション技法がその中心概念である。事象の背後に潜む因果律を分析し、新たな事象に適用することにより様様な成果が期待できる。

特に社会科学において「複雑系」的分析は、大きな示唆を与える手法と考えられる。

(研究手法)

本稿では、所与の条件下での製品市場(仮想市場)での企業戦略の性質、手法の特徴などから、製品価格、出荷数量、流通速度等定量分析に適すると考えられる市場要件と消費者の嗜好、企業戦略等ゲーム理論的な定性分析に適する市場要件とに分類し、相互の関連についても論じていく。

(前提)

(1)市場構成要件の中で、定量分析の限界を指摘する。

定性的情報によりどの程度、意思決定に影響があるのか、どの程度、不確実性をもつのかにより定量化する。

*パラメータの設定基準を構築:数式モデルを細分化して場合分けに対応。多様化に対応。

*企業の市場行動ではゲーム理論的論理に基づく行動原理が作用する傾向があるため、確率モデルを導入する。

(2)「複雑系」概念の市場分析導入

 予測シュミレーション「企業における生産活動や販売活動において合理的かつ経済的な意思決定を行うために人や組織の行動、現象を数量的モデルに置き換えて科学的分析を施し、その実施に有効な情報を提供する原理、手法」を市場概念に導入する。

即ち、「実験ー解析ー統合」のプロセスがコンピューター技法により可能になり、分析環境が整い、再現性が発揮できる。またウィーナー「サイバネテイクス」のアイデア、即ち定量的制御が可能になる。

 複雑系手法の特徴を以下に掲げると、

*複雑系分析の中心は多変量解析であり、データからの推論を実証する。

*サンタフェ研究所の主唱とする手法のテーマは「複雑系の科学:第一原理は発見できないか無数の原理が複雑に入り組んだ多体相関系に潜む法則性の発見」である。

*シュミレーション:複雑系への理論アプローチ

(利点)複雑な事象の解明。仮想条件から最適条件での観察が可能。経済性の向上。新たな問題提起が可能となる。

(不利点)単純化する際の重要要素欠落の惧れ。定性分析に限界。

(予知できること、出来ぬことは問題の性質による)

*複雑なシステムを理解する概念を獲得できる可能性。

*統計科学では「複雑なシステムにおける情報の流れを統計モデルのツールを用いてデータから抽出し複雑な事象を理解する」

これは演繹的に仮想世界を構築する複雑系に対して、事象を帰納的に分析する手法である。

事象を基本原理に当てはめて論理的な説明を加える。

(事例)

*統計的モデリングの要点(情報量基準AIC。汎用モデル。計算法:非ガウス型フィルタ)

AIC(赤池情報量基準)=-2(対数尤度)+2(パラメータ指数)

同式は対数尤度でパラメータの2倍を補正しバイアス修正が可能となる。

*予測手法

1.Kullback-Leibler情報量による評価

2.K-L情報推論とバイアス修正

これにより他のモデルと同じ条件で比較できる。

K-L情報量モデル

g(x):真の分布  f(x)モデル

I(g、f)=Еrlog・g/f=Еrlog・g-Еrlog・f

Еrlog・f(y)=∫logf(y)d・g(y)

対数尤度

Σ(g・f)を最小⇔Εrlog・f(y)を最大=AIC最小

*事象情報・データ → 統計モデル → 情報判断

                   (最尤法/AIC基準:モデル判定)

(注)参考「総合研究大学:国際シンポジウム」 1999.13.March 

複雑系への戦略:Strategy for Complex systems」

デカルト方法序説:要素還元手法:複雑、無秩序な現象を、単純化した事象に抽象化して還元して要素間の因果律、法則性を予見する。

*平衡性ー非平衡性       *可逆性ー非可逆性

*線形性ー非線形性              *決定性ー非決定性

*飽和性ー非飽和性              *安定性ー不安定性

 (経営科学としての予測)

(事例)

予測手法

*経済予測

(1)時系列分析

(2)回帰分析

(3)計量経済分析

(4)産業関連分析

*需要予測

(1)内部予測(時系列分析・指数平滑法)

(2)外部予測(回帰分析法・弾力性分析・計量経済モデル分析)

*予測技法

(1)直観予測(デルファイ・クロスインパクトマトリックス・クロスコリレーションバジェステイング)

(2)探索予測(外挿法・シナリオ・ツリー(関連樹木)・シュミレーション・インプットアウトプット)

(3)規範予測(ネットワーク・マトリックス・関連分析)

*傾向外挿法:

過去、現在の傾向線を延長して将来を予測。予測の対象が連続線形、定常的であることを仮定。

外部作用には対応できない。この手法には(1)関数当てはめ法(2)包絡曲線法(3)傾向相関法等がある。

*関数当てはめ法:一次直線、二次曲線、指数曲線、成長曲線

*一次式(y=ax+b)の係数決定は最小二乗法でおこなう。

曲線モデルは正規方程式で計算。

事象yの単位時間当たりの変化dy/dt(進歩速度)が一定値aの近似に集まるとき 

一次式y=at+bに当てはめうる。

*二次式(y=at/2+bt+c)

現象yの単位時間当たりの変化率d2y/dt2  (進歩加速度)が一定値aの近似に集まるとき

*指数曲線

現象yの単位時間当たりの変化率dy/dtと、その値yとの比率(成長率)が一定値aに近似する。

即ち1/y・dy/dt=aであるときy=Aeatとなり指数関数を当てはめることができる。

対数を取りY=lnyとすると、Y=at+cとなり一次式となる。ここでc=lnA.

指数関数の当てはめには、縦軸を対数目盛りである2次平面で一次式を当てはめる。

事例:特に技術進歩など。デザインルールの事例(集積回路)

*成長曲線の当てはめ

現象yの成長率が一定でなく、ある限度Lに接近するにつれ成長率が減少する傾向、即ち

1/y・dy  /dt=a・(1-y/L)

と表現できるとき

y=L/1+me-at

となり、この指数曲線を成長曲線(ロジステックス曲線)と呼称する。

耐久消費財の製品市場拡散が、試験期、市場浸透期、安定期、衰退期、を経過すると説明される。

特に需要予測の場合に用いられる。

事例:蛍光灯、白熱電球の拡散には、正確な精度(パール1920年)

なお、成長曲線の飽和限界Lを含めた係数は、線形式に最小二乗法を適用して決定する。

*包絡曲線法

この手法は技術予測分野で開発された外挿法の一つである。個別技術が総合的に統合され技術エスカレーションが観測される

(個別技術の包絡曲線を推測しうる)

事例:輸送手段の高速化

粒子加速装置のエネルギー増大化

照明手段の効率化

*傾向相関法

異種の現象相互間にタイムラグをもった相関関係がある場合、相関関係を分析することにより先行現象傾向から遅行的現象傾向を予測する外挿法の一つである。

事例:戦闘機と輸送機の最大速度の比較分析。(最先端の技術進歩を利用する戦闘機と安全性を第一とする輸送機との間にはタイムラグを持った相関関係がある/そのため先行技術と時系列にタイムラグをとり輸送機に技術が採用されることが推定される)                                 

参考文献「システム技法」:竹村伸一、日本理工出版会  1999   


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