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  • 2010.1-10 記事リスト①
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リアルオプションの文献テキスト

(リアルオプションの文献テキスト)
①Amram & Kulatilaka(1999)"Real Options - Managing Strategic Investment in an Uncertain World"
②Lenos Trigeorigis(1999)"Real Options-Managerial Flexibility and Strategy in Resource Allocation"(以下 項目1)
③Avinash K. Dixit &Robert S. Pindyck"(1994)Investment under Uncertainty"Princeton University Press, Princeton, NJ,(以下、項目2)
 

1.書評・要旨:「リアルオプション」Lenos Trigeorgis 著 川口有一郎 他訳 エコノミスト社

著者トゥリジオリス教授は、リアルオプション分野における世界的なリーダーである。

「リアルオプション」は、「不確実性のもとでの資源配分あるいはプロジェクト評価についての古典的な主題を扱う。特に、企業の実物オプションとしての経営の柔軟性、および戦略的な相互作用について扱う。金融証券のオプションと同じように、実物オプションはある特定の価格で資産を取得したり交換したりするための、義務を伴わない、自由裁量の決定や権利を含んでいる。実物オプションは、例えば、投資を延期したり、事業を拡張したり、契約したり、施設を廃棄したり、あるいは利用方法を転換する決定や権利である。」

ファイナンシャル・オプションとは異なり、リアル・オプションは厳密に定義されていない。
そのため、リアル・オプション分析は懸案のプロジェクトにどのようなオプションが存在するかを確認することから始まる。
①「タイミング・オプション」は、例えば、ある新製品の開発において十分に需要が高まるまで投資を延期するオプションである。
②「成長オプション」は、例えば、販売員のネットワークを利用できる化粧品企業が中国に進出すると、化粧品の工場や化粧品販売店のための投資が化粧品以外の広範な商品の販売を可能とする。これは初期の投資目的以上の収益を得るオプションであり、日本においても薬局の成長やインターネットのYahoo株の成長はこの種のリアル・オプションで評価できるであろう。
③「段階投資オプション」は、一括投資する代わりに段階的に投資するオプションである。各段階で将来の複数のオプションが提供される。
④「退出オプション」は、例えば、新しい化学製品を商業ベースにのせようとしても需要が成長しなかったり、あるいは環境規制からの制約があまりに大きいときには市場から退出する。退出オプションはダウンサイド・リスクを減ずるので全体としてプロジェクトの価値を高める。また、
⑤「中止オプション」はビジネスの操業中に需要が弱い時期に店舗や工場を閉鎖するオプションである。ロンドンのドッグランド開発においてカナダの不動産会社は中止オプション、および退出オプションを利用した。
⑥「フレキシビリティ・オプション」
⑦「学習オプション」などがある。
(この段落はHarvard Business Review January-February 1999の記事に加筆したものである)。

2. 理論と実務のギャップを埋める-Trigeorgisの挑戦-

  理論と実務の間には大きなギャップがある。潜在的なプロジェクトを評価するために、彼らはコーポレート・ファイナンス理論の正味現在価値(Net Present Value, NPV)法に頼らざるを得ない。しかし、経営者はこのモデルを信頼しているわけではない。NPV法が現実の経営戦略の価値を無視しているからである。本書で展開されているリアルオプション理論は伝統的なNPV法の欠点を補い、不確実性のもとでの資源配分あるいはプロジェクト評価の理論と実務の隔たりを縮めようとするものである。

 ①「不確実性コーン」アプローチ

 リアルオプションを説明する方法にはいくつかのアプローチがある。アムラム&クラティラカは「不確実性コーン(corn of uncertainty)」を用いている。「不確実性コーン」は、投資プロジェクト(あるいは資産)の価値が時間的にどのように変化するかを簡単な図式として表現したものである。縦軸に価値、横軸に時間とした座標軸上に、投資プロジェクトの価値の時間的な変化を描くとコーンを横に倒した形(右側に広がった)で模式的に表現できる。従来のNPV法は不確実性コーンの中に数本の「固定されたパス」を「人工的」に想定してプロジェクトを評価するものと捉えられる。これに対してリアルオプションは不確実性コーン全体を評価対象とする。また、経営戦略によって外生的に与えられた不確実性コーンを上方に回転する(リスクのエクスポージャーを改善する)ことができると考える。その改善の度合い(不確実性コーンの上方シフト)がリアルオプションの価値である。

 アムラム&クラティラカの不確実性コーンによるリアルオプションの説明は図解的な説明なので直感的に理解しやすい。しかし、リアルオプション・アプローチをさらに深く知ろうとする読者にとってはフラストレーションが残る。アムラム&クラティラカは実務のビジネスマンや経営者に対して「リアルオプションの考え方(real option thinking)」を広く啓蒙することを執筆の動機としている。リアルオプションを意思決定、および投資分析などのツール・キットとして利用することよりも、経営のための新しい思考方法として解説しているところに彼らの本の特徴がある。リアルオプションによる問題解決方法を例示したり、様々なビジネス(石油探索、新薬の開発、インフラ投資、不動産の評価など)へのリアルオプションの応用を例示している。

②「不確実性下における動的最適化」アプローチ
ディキスト&ピンディクのテキスト(「不確実性のもとでの投資」(エコノミスト社)がある。彼らはリアルオプション・アプローチを不確実性下における動的最適化手法として説明している。そこでは、金融市場におけるオプション評価理論から不確実性のもとので最適投資ルールが導かれる。これを「条件付請求権分析(contingent claims analysis:CCA)」という。投資プロジェクトをコストと便益の流列として定義することから始める。コストと便益の流列は時間変化し、不確実なイベントにも依存するものとして定義される。投資機会や完成後の運用収益に対する権利を有する企業や個人は価値を生み出す「資産asset」を持っているものと考える。現代の経済は様々な資産が取引される市場を持っている。仮に、投資プロジェクト、及び投資機会が市場で流通する資産の一つとなれば、投資機会の市場価格を知ることができる。投資プロジェクトはそうしたマーケットで直接取引されることがないが、他の流通資産を通して投資プロジェクトのインプリシットな価値を計算することができる。これがCCAのアイデアであり、またリアルオプションの評価方法である。

 

③ Trigeorgisリアルオプション

 トゥリジオリスの本書は、リアルオプションの解説書としては、アムラム&クラティラカの不確実性コーン・アプローチとディキスト&ピンディク(「不確実性のもとでの投資」(エコノミスト社・近刊)の不確実性のもとでの動的最適化アプローチの中間に位置するものである。以上、エコノミスト社「リアルオプション」書籍紹介より要旨をピックアップした。

2.「投資決定理論とリアルオプション -不確実性のもとでの投資-」ディキスト&ピンディク著 川口有一郎 他訳

要旨「リアルオプション・アプローチは資本投資の経済価値を求める方法である.」「リアルオプション:実物資産投資は,例えば,投資を延期する,規模を拡大(あるいは縮小)する,転用する,あるいは撤退して投下資本の一部を回収するといった様々な柔軟性を有している.
実物資産の投資家(経営者)は,将来の各時点でこうしたオプションを行使することができる.
①延期オプション
②変更オプション
③転用オプション
④撤退オプションなどを総称してリアル・オプションという.

意思決定におけるオプションは,従来から,意思決定木分析(Decision tree)としてモデル化されてきた.
リアル・オプション・アプローチは決定木分析にモンテカルロ・シミュレーションを組み合せた方法である.現在価値の計算に際して,割引率の決定に悩まないで済むところに最大の特徴がある.
 投資は,経済学では,将来の報酬を期待して現時点でコストを支払う行為であると定義される.また,生産要素としての資本財を購入することを資本投資という.住宅や耐久消費財などを購入することも広い意味での資本投資である(この場合,将来の報酬は長期にわたりサービスを享受できることである).
 マーシャルの古典的なルールは,将来の報酬の価値がコストを上回るときに投資せよと教える.
また,完全競争市場を仮定すれば,資本財のレンタル市場での均衡条件は資本の限界価値と資本をレンタルするコストが等しいという条件として求まる.そのため,資本のユーザーコストと限界的な利益が等しいときに投資せよ,というのがジョルゲソンの投資理論であった.一方,トービンは資本資産の購入価格(再調達コスト)に対するその市場価値の比率を「q」と呼んだ.トービンはqが1以上のときに企業は投資すればよいと考えた.
 マーシャル,ジョルゲソン,およびトービンらの新古典派的な投資理論は,上記の判断に調整費用などを取り入れながら,理論・実証の両面において研究が進んできた.
しかし,新古典派的な投資理論は投資の意思決定の重要な特性を無視している.
①投資は部分的あるは完全に「不可逆(irreversible)」である.
②投資から得られる将来の報酬は「不確実(uncertainty)」である.
③投資家は投資の「タイミング(timing)」という余裕を持っている.
不可逆性,不確実性,およびタイミングという3つの特性,これらの相互関連,が投資の最適意思決定を特徴づける.現実の投資は,例えば,金利や税制の変化に対してその反応は比較的緩慢であるが,経済環境のボラティリティや不確実性に対しては非常に敏感である.不可逆性,不確実性,およびタイミングという3つの特性の相互作用を考慮することによって,新古典派的な投資理論の欠点を補うことができる.また,より現実世界に近い投資理論を組み立てることが可能である.投資機会が有するオプション的な特徴を強調した,不確実性のもとでの不可逆的な投資理論のテキストで、そこでは,MM理論にも変更が加えられる.

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