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ITとMNC市場行動モデル

ITとMNC市場行動モデル

本項では、多国籍企業の市場行動パターンについて、各企業のIT導入による市場成果を分析する。ここで経営戦略分析におけるモデル分析のプロセスは以下の概念図に示される。          表5:戦略モデル分析と実測値との相応関係

戦略モデル分析

相互関係

実測値計測

Plan : 経営戦略立案 

 シミュレート

実際市場の計測(開始):Estimation

Do : 戦略実施   

予測値 

アセスメント     :Assessment

See : 評定(帰結) 

 実測値

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                                (Takegami 2000

戦略立案は最適化を目標とするシステム的思考から、データの収集(収集可能性、精度)と分析、戦略手法群を用い論理の組み立てをおこなう。以下、ITに関連する空間距離モデルをベースに選択確率モデルを構築、新製品の市場機会オポチュニテイについて戦略立案のシナリオ予測をおこなう。特に消費者と製品間の論理関係である選好性モデルの設定をここでは中心に扱う。

-1ITと企業の市場行動モデル

ITの企業戦略への導入により競合化の度合いが高まり、①全て新製品はニッチ製品となる。②市場ニッチの幅は益々極小化する。③選好性が高まり、流行(選好性の変化、移動)が著しくなる。と推測される。

5-1-1Positioning(選好回帰モデルとコンジョイント分析モデル)

新製品の市場投入について市場機会(market opportunity)を発見するため、製品ポジショニングをマッピングする。一般に、①既存製品の市場シェアに競合する製品は市場投入され難い。②限られた市場シェアに新製品を投入するのは、リスクが大きいため、戦略上ベネフィット評価を判別分析にかけて、判別スコアの重心から遠く乖離しないニッチを発見する。市場成長を上回り製品構成の細分化が進むことは、各プレイヤーの企業のIT導入により加速化すると考えられる。その結果、発見されるニッチ点は更に細かく、市場成長が比較的に限定されると予測される。この背景にはプレイヤーが不完全競争状況を創出する市場戦略を採用すること。また製品需要に支配される市場機会よりも、ITの導入により企業側の競合機会が多くなること等が考えられる。(尚、詳細は「RDMと経営戦略オプション ―アバナシ―・シェラー仮説の実証分析―」武上1997

表6:回帰モデルによる製品ポジッショニングの検索

戦略策定

戦略モデル

製品空間(ポジショニング)を作成

ポジショニング分布

ポジショニングに消費者の埋め込み

理想点モデル

消費者と製品との距離を計測

空間距離モデル

新製品シェア予測

シェアモデル

Takegami 2000

次に理想点モデル(Carol. AT&T Bell.1972)の設定を行う。これは消費者と製品を関連付ける論理モデルに相当し、消費者の選好性を示す。これには①理想ベクトルモデル②理想点モデル③折れ線型モデルがある。(注:「マーケテイング・サイエンス」片平秀貴97.35P

ここでは理想点モデル(正の理想点モデルとその逆問題の負の理想点モデル)を採用する。

               4:正の理想点

選好

 これは消費者の理想点に近い製品ほど選好されることが示される。負の理想点を中心に等選好度曲線を描くと、同心円となり、正の理想点が無限遠点へとんでしまう。そのため正の理想点のみを前提とする。次に製品と消費者との距離を計測する。多次元での消費者Iの正の理想点をCiであらわし、製品jのポジションをPjであらわす。

一般に2   ijの距離を、差のべクトルの内積で表す。(定義)

ij=(CiPj)’(Ci―Pj)   ----------------------------------------------------------------

これにより消費者と製品の間の距離Dは

   D=( d ij )     ----------------------------------------------------------------

尚、選好は距離の逆数に比例するものと仮定する。----------------------------------------③                              

5-1-2Share model

消費者は正の理想点に近い製品ほど選好する。また消費者は選好の度合いに応じて製品を購入するものとして購入確率を求める。次いで対象となる全消費者について購入確率を積み上げ、新製品の市場シェアを算定する。

既存製品をA,B,C、新製品をXとする。これらの理想点からの距離をda, db, dc, dxとする。③から1/da, 1/db, 1/dc, 1/dxは選好度に比例する量となり、しかもこの合計が購入確率の合計1になるように、パラメータwを決定する。

(1/da+1/db+1/dc+1/dx)・w=1   -------------------------------------------------------

これから w=1/(1/da+1/db+1/dc+1/dx--------------------------------------------------

従って新製品Xの購入確率Pxは比例配分から

Px=1/dx・w

Px=1/dx・1/(1/da+1/db+1/dc+1/dx---------------------------------------------------------

一般にA,B,C-----Nの既存製品の場合

dsum=/da+1/db+1/dc+----1/dn

⑥式は Px=1/dx・1/(1/dsum+1/dx--------------------------------------------------------

新製品Xの市場シェアは、これよりn人の消費者に対しPxを計算し、その合計値Xmをnで割り返すと算出できる。

作図:Px=1/dx・1/(1/dsum+1/dx

距離=√di x

テキスト ボックス: 選好度  

S=Xm /----------------------------------------------------------------------------------------------

この場合、ITの導入により消費者と製品の距離dが限りなく小さくなると仮定すれば

1/d’x1/dx

∴1/d’a+1/d’b+1/d’c+1/d’x>1/da+1/db+1/dc+1/dx

購買確率が高まるが、他の条件が一定であれば、その分ニッチ幅が狭まり理想点発見の市場機会が減少する。

5-1-3.市場モデル

消費者行動モデルでは製品価格、消費者選好性を説明変数とする多項ロジッドモデル(マクファデン1970.佐野1990)を使い、購買確率を定式化しマーケットシェアとする。

選好度Preferenceが大きくなるほど購買確率も大きくなる。(格差が明確に示されるように指数表示する)

選好度P(一般解)    u=exp(Pj)/Σexp(Pj)-------------------------------------------

一方、企業行動モデルについては、このマーケットシェアモデルを用い利益関数を定式化する。市場に於ける価格競争の状態を非協力N人ゲームとしてモデル化する。

①消費者行動モデル

企業Iの製品に対する消費者の効用Uiは、確定的効用Viと確率的効用εiの和で示される。

    Ui=Vi+εi,    i=1,2,3,------,n

企業iの製品価格piとするとき、確定的効用Viは、IT導入による部分効用f(pi)と製品特性による部分効用Aiからなるとする。

    Vi=f(pi)+Ai   i=1,2,3,------,n

⑨により、製品iが選択される確率をマーケットシェアとしたとき、選択確率は製品iの効用が最大になる確率を表す。

mi=Probability(Ui=maxUj│j=1,2,----,n)

=exponential(bVi)/Σexp(bVj),   i=1,2,3,------,n

尚、bは消費者選好について消費者の異質性の尺度となる。

②企業行動モデル

製品iの製品コストciITの導入についてIT特性ai,マーケットの大きさQとするとき、企業iの利益関数πi,

πiQmi(pi-ci),           i=1,2,3,------,n

利益関数πiは、pici、のとき、πi=0であり

lim

(

pi→∞

)

πi0                i=1,2,3,------,n    

利益関数πiは、任意の価格Pjにて最大値が存在することを表す。

各企業はPiを所与の下で利益関数を最大にするように意思決定するとき、以下の連立式を満たすpi**がナッシュ均衡となる。

πi(P1**,--- Pi-1**,Pi+1,---,Pn)≧πi(P1**,--- Pi-1**,Pi+1,---,Pn)

ナッシュ均衡解と製品価格piの範囲で判別関数を以下に定める。

D1(p,c)/pb(’(p)-(p-c)f’’(p)) ------------------------------------------------

図示した範囲で均衡解が存在するが、IT特性により解の存在領域は限定される。

(参考文献)中川、葛山、大野「知覚価格に基づくプライシングモデル」JIMA  vol.51.2000.6

結語

ITの導入について経営戦略に与える効果と問題点を指摘してきた。ITパラドックス、ITビジネススタイル等、IT導入が必ずしも市場効果を産むとは言えない事。また市場情報の完全性の問題は、経営戦略に様々な影響を与え、本来、経営戦略は不完全市場を創出する手法であるため、従来の戦略策定に比べ、さらに激しい競合化を前提にしたものになる。また米国企業のIT導入の前提条件と日本のそれとは、相違が著しいため導入効果にも大きな差異が生じ、さらに米国企業の競争優位は確立されつつある。いずれにせよIT導入により、競合化は著しく、購買確率は増大する一方で、市場機会は限定されるようになる。

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