アメリカ・スモールビジネス事情①ネットワーク経済の利益源泉
アメリカ・スモールビジネス事情①
本稿では、米国のスモールビジネスを扱う。日本との取引で米国で成功したビジネスは、そのままで日本で成功に結びついた事は少なく、その翻訳(日本ビジネスへの適合化)のノウハウが重要である。
先ずはアメリカ・ビジネスの理解から、アングロサクソンのビジネス手法を過去から概観すると、いくつかパターンがあることが分かる。次いで、そのパターンにより、日本ビジネスへの適合化を考えてみる。
日本の個人高額納税額者をみると、古くは西和彦(アスキー・日本マイクロソフト)、社内コーヒー給湯器設置など米国商品の輸入代理店となった事例が数多い。但し商品自体の代理輸入よりも、そのビジネスの仕組みを紹介導入した成功例は、リース、レンタル、ゴルフ会員券、ヘッジ会計、ポートフォリオ、リボルビング、インデペンデントコントラクタ、ファンドビジネス(吉本興業が「お笑いファンド」で成功)、デリバティブなどは、今日当たり前のように理解されるが、導入時期には日本人には理解を超えたシステム・スキームだった。
今、そのようなビジネスのシステムが大きく変容する時期になり、日本市場は、アメリカのミラー(鏡)市場化(=同質化)してきている。日本のIT長者の多くは、アメリカ先端ビジネスの日本への導入紹介者だったため、その地位を得た。創業者利得である。
まずはアメリカのビジネス土壌から見ていこう。
(アングロサクソンのビジネス発想)
海洋民族であるアングロサクソンは、古くから航海術(ナビゲーション)、その後の航空術(アビエーション)に卓絶した技術を育ててきた。現在、そのネットワーク機能として経済を成長をさせてきた航空、海運、陸運、物流、配送、送金、インタネットなどは、およそ英米人の発想に起源を持っている。
(アングロサクソンのビジネスモデル:貿易)
貿易は、アングロサクソンの代表的なビジネス手法であり、国内と海外の市場を連結し、自国市場の延長に海外市場を置く、関税国境という障壁は、自由主義という彼らの信条には、解消すべきものである。歴史的に米国では、州法が大きな地域性を維持する制度であり、連邦法は、州際取引の敷衍化の制度である。
貿易では、
①英語が共通公用語(事実上の商取引、契約などでの法廷用語)、であり
②ビジネス運用には英米慣用法と条約、UCC(米国統一商法典)の一般利用が普及、インコタームスも源流は、1929年米国大恐慌に際しての経済ブロック化の条約化であった。
③そしてドルのっ貿易での共通通貨化である。合衆国ドルは国際重要商品を唯一購入できる通貨であり、外貨準備高では、金保有に替わり、国富と理解されている。このドル覇権は米国を経済的に世界最重要国に押し上げた。
(ネットワーク経済の利益源泉)
どんな商品、サービスにも税金と金利は巧みに組み込まれている。
税金システムと国家
ところで国家は、強制的に税金を徴収する経済システムであり、また国民の生活の目に見えない隅々まで、貨幣取引に浸透し、重複、重層的に徴収できる巧みな手法で、取立てを行う。およそ税収率だけを見てみても、どの企業よりも優れた収入を合法的に保証されている。
金利システムと金融業
平成不況も深まり、製造業、小売業など、また経済ソフト化に支えられたサービス業も減収となっているが、銀行、金融業は軒並み空前の好況に活気付いている。金利は、商品、サービスのどの取引範囲、取引段階にも巧みに取引に組み込まれ、末端の消費者からも中間流通、製造業、また海外の商品、資源供給先からも、金融ネットワークの流れに沿って、金利を回収できるシステムをもっており、金融機関はそのネットワークを築けば、そのネットワーク流通として金利を集金するシステムである。
今、税金、金利は、ネットワーク経済性のストロー効果により、巧みに回収を図る事のできるシステムにより確固な経済力を有する制度である。
貿易とドル経済
ところでアングロサクソンの考え出した最大のビジネスモデルは、このネットワーク経済の構築とストロー作用により、末端からも確実に経済を吸収するシステムであり、これによって圧倒的な優位性を打ち立てた。
最後は、ドルである。ドル(銀の塊からの造語、メキシコ(Sのマークは主宗国スペイン)との戦争(米墨戦争)で銀資源と蓄積を得て、銀本位をその後、中国、アジアにも拡張した)は、国際貿易で共通通貨であり、ドル取引の最終決済(両替など)は必ず米国系銀行へ帳尻が送られることから、世界のどの国でもドル取引が行なわれれば、米国へドル取引での金利の一部、手数料がもたらされ、またドル覇権により、ドル黒字国へドル安誘導すれば、ドル債権の米国還流も可能な万能通貨である。
このドルもネットワーク経済性での圧倒的優位性から、税金、金利にも似たシステムであると考えられる面がある。
現在はインターネットがその好例であり、これも世界の利用者全てから、米国企業数社が利益を吸収して、従来のメーカー、サービス業では歴史的にも過去に存在し得なかった程の巨大資本を産み出した。
これまでの世界の大企業(エクソン、シェル、フィリップ、トヨタ、GM、他)は、実態ある物、サービスを提供して収益を上げている。マイクロソフト社は、ネットワークのデファクトスタンダード(ネットワークを利用するOSや専用ソフト)により、情報のパイプライン産業となっており、自社は付加価値を生み出す(GDP生産に貢献する)こともない。
商品やサービスを作らなくとも、付加価値生産しなくとも、自動的に利益の得られるシステムの構築が彼らの目的だった。インタネットを利用すれば、必ず、M社に収入がもたらされる。
ソフトバンク(以前はパソコンゲームソフトの中古屋だった)など日本のネットワークビジネスの小ゲイツ達は、システムさえ設定すれば必ず、収入がもたらされる仕組みを早期から狙っていた。さらにそのネットワークシステムに銀行を接続すれば、大きな資金のサプライチェーンの運河を形成し、利用者から安定した利益を継続して受け取る。
ネットワーク・ビジネスとネットワーク標準化、経済性の獲得が、アングロサクソンのビジネスの源流である。
*補足;ガス、水道、電気などネットワークで家庭まで配給されるが、供給元で100配送すると、100が家庭に到着しているだろうか。また100は家庭内で100%消費されているだろうか。「逸失率」といって水道は98程度、ガス配給は96程度と実は100%家庭には到着していない。また家庭内でも100%利用されてはおらず、どこかで漏れがある。また郵便も100%配送しているだろうか。公共サービスの点検ビジネスであるが、参考までに米国のオンブズマンで良く聞かれる話題である。
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