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国際貿易と技術革新 5 MNCの内部化理論                  

第5章;MNCの内部化理論

 MNCの海外直接について、1970'sに構築された内部化理論は当時、米国企業の欧州への海外直接投資の盛んな時期にMNC の生成、発展を説明するのに有力な学説である。

要点1. 企業が海外直接投資を行うのは、経営諸資源の潜在(Potential )力を活用し比較優位を形成するからであるとして、特に技術ライセンスに対してストレスを置いた事に内部化理論の特徴があるとされる。当初、バックレーとカッスン(P.J.BucklyM.C.Casson1979)が提唱し、ウイリアムスン(Williamson75)の取引コスト節約論を発展させたのはラグマン(A.M.Rugman 81)であり、レディング学派の内部化理論として完成した。

要点2 .内部化理論は  主に国内企業における企業理論を国際的企業活動に拡張し適用したものである。企業の内部市場は情報の不完全性の条件に対応する。内部市場組織の情報統合化は必然的に意志決定の集権化をもたらす。その点で内部化とは意志決定の集権化の理論である。

 

1.外部化と内部化の利益均衡:PLCとSunk costについての小島命題

1-1.ラグマン内部化理論のアプローチ

 内部化は要素市場の外部性に対応して生じ、主に関税、非関税制度の財市場の歪みが対外直接投資やMNCの行動を引き起こすものである。国際貿易、国際投資の自由で効率的な働きを妨げる市場の不完全性を調整する理論である。 市場の失敗によりMNCは内部化を通じ、外部性と政府規制を克服し比較優位を構成しようとする。

 ラグマンは内部化理論を一般化する過程で主な国際直接投資理論:ヴァーノンPLC仮説と小島清日本型対外直接投資理論が、内部化理論の一部である事を論証する。

 企業は内部化の過程で、一定の対外市場と内部市場の間に取引の固定費用を必要とする。例えば供給者と需要者の間のコミュニケーションチャネル構築費用である。また取引の遂行に伴う変動費(取引コスト)があり、これは取引の額に対し独立変数である。

 例えば,一度に取引可能な最大量が存在し、この最大販売量が小さく、そのため市場内での取引量の変更に対して度数の変更で処理しなくてはならないとすると、総変動費は、取引量と直接比例関係となるであろう。

 ここで垂直的生産過程にある2つの段階を取り結ぶ1つの中間生産物市場が存在し、その生産過程の各段階で生産するプラントはそれぞれ1つしかないと仮定する。仮定した市場の中で2つのプラントの総利益を最大化させることを行う。

 販売側のプラントの費用関数および購買する側のプラントの費用並びに収益費用関数を所与とするとして、この中間生産物取引が両プラントの総利益にどれだけ寄与しうるかを算出する。

以下の図1-1にて曲線AA’(PLCによるロジステイック曲線)でBがその頂点となる。取引コストを0とするとBが均衡取引量q-0を決定する。

内部市場の設置が外部市場の設置よりも固定費の負担が大になるものとすると、内部市場のコストは先の両プラントを買収し統制システムを確立するのに要するコストに一致する。これに対し外部市場の固定費は極めて小さいけれども、内部市場の変動費は外部市場のそれに比べて非常に小さい。

ここで内部市場における取引コストはCC’で、他方外部市場の取引コストはDD’で表される。

       図8-1 内部市場と外部市場の取引コスト   (E;均衡点)

      

 

 直線CC’とDD’は均衡点Eで交差する。図E点より左側では外部市場の取引コストが最小となる。よって最小の取引コストは線分DEで表され、またE点より右側では内部市場の取引コストが最小になり最小コストは線分EC’で表される。全体として最小取引コストはグラフ軌跡DEC’で表され、E

、取引量q-1で屈折する。このグラフではq-1以下の取引量ではプラントは個別に取引され市場価格で取引される。他方q-1以上の取引であれば両プラントは統合されて、取引は内部化される。

現実に市場が内部化されるか、外部化されるかは取引量に依存し、取引する収益及び最小取引コストの双方が取引量により変動する。両プラントの取引量が増大するほど内部化傾向が大きくなることが例証される。

1-2.内部化理論を支持する立場:DunnigBuckley=Casson モデル

 ラグマンは多国籍企業のこの傾向につき、外部性を内部化するシステムと論じている。内部化理論を支持し発展させた考えに海外直接投資 の労働賃金の分析(Ether.W.J. Horn.H1990)がある。ここでの論点は海外直接投資のコスト面での特徴として以下の項目を掲げている。

a)企業組織の規模が拡大するに伴いコストが増大する。

b)海外企業活動する際に不要なDisadvantageのコストが増大する。

c)一定の固定費でHead quater serviceを利用できることから規模の経済性が働く。これらの諸条件の相互関係と、両国の相対的賃金格差が企業の規模と国際投資のパターンを決定する立場から内部化理論を支持する。

 また経済厚生の観点から内部化を支持する立場にホーストマン=マークセン(Horstman.IMarksen.J 1989)があり、経営資源に注目して直接投資においての経済厚生を分析する。一度開発された経営資源は、0の限界費用で海外子会社でも独占的に利用され、複数の地域で併用されことでネットのゲインとなり経済厚生が増大する。受入れ国では投資を受け入れ企業間の競争が盛んになり価格が平均費用にまで低下し、さらに投資コストなしで開発された経営資源を利用できるため受け入れ国の経済厚生が上昇する。一般均衡システムの下で内部化の利益を支持するが、ここで生じるサンクコスト (埋没費用)についての概念を導入する。

 小島(81)は「多国籍企業の内部化理論」においてこの理論構築の過程について詳細な研究をおこなうが、ここでは以下の説明を行っている。

 先ず初めのMNCの理論的解明は、ハイマーHymer76 らの独占的寡占論による産業組織論的アプローチで始まったのであるが、これに対抗しレデイングReading学派が中心となり企業内部と市場との関連から内部化理論の構築が図られた。先ずダニングDunning80)が国際生産の折衷理論(規模経済、内部経済、立地論を統合するもの) ,次にラグマンRugmanが位置している。これは先に挙げた内部化理論であり規模の経済性と内部化による市場利益をMNCが活用できることを骨子としている。内部化理論をフォーミュレートしたバックレー=カッスンBuckley=Cassonモデルがあり理論骨子は、輸出と言う市場取引に比べ海外直接投資という内部化の方が多国籍企業にとって有利になる条件を明示している。

2.バックレー=カッスン(Buckley=Casson)モデル

 レディング学派のBuckley=Casson81 は経営資源のうち技術、情報、組織を中間財とし、これを内部価格付けにより低廉に調達できるから可変費用を低めうることがMNCの利益の源泉であるとする。小島(81)はこの点で一歩、理論を高めMNCの作り出す

a)内部市場の規模の経済性の実現と

b)DFIの方向性にポイントを置いている。

その論拠として以下の小島命題を掲げる。

「企業の有形無形の資産がセット・運営され、規模経済が実現されるにつれて、逓増収穫=逓減費用がもたらされる。それ故、限界費用=限界収入になる生産量に制限し、独占利潤を最大化することが有利となる。」「可変費用=限界費用の低廉化を重視する議論は独占的行動の正当化に連なるが」これは社会的便益の最大化と相克する点。

 及び「DFIによる海外生産の方が輸出よりも企業にとって有利(逆貿易志向性)であるか」について必ずしもそうならぬこと、また割高になった国内生産を海外生産に移し輸入することの有利さ(順貿易志向性)が明らかとなること。以上が論点である。

 この内部化理論の本質はMNCの優位性はサンクコストであり、また独占的行動の担い手にあることである。この点に小島命題はストレスを置く。

3.RDMと内部化のメカニズム

 この内部化理論の概要として、内部化とは企業が企業内にその取引市場を作り出すプロセスであり、この企業の内部市場とは、欠陥ある正規市場または外部市場に代替して経営資源配分と流通問題を経営管理命令のシステムにより解決するものである。

 ここで取引コストの概念を用いて企業の比較優位要因創出のプロセスを説明すると、企業は、企業の内部価格(或いは移転価格)により、企業外部市場を企業の組織活動を円滑にしうる内部市場に取り込み、内部市場を潜在的に機能させて取引コストを低減させ、正規市場と同じように効率的経営活動をおこなう。

   企業にとって利益の機会のない欠陥市場が存在する場合、あるいは正規市場の取引コストが著しく高い場合に企業が内部化をおこなう機会が生じる。特に企業活動がグローバルに及ぶ場合は、広範な世界市場の需要供給構造、参入障壁等、市場規制等の存在からMNCは、国際的不完全市場において内部化を試み厚生の増大をおこなう。

 特にラグマンは企業取引市場の内部化の動機を海外直接投資(DFI)に求め、貿易と言う市場取引よりも内部化方式の直接投資のほうが選好されることを理論として精緻化した。ラグマンによるとMNCとは本国親会社の複製製品、あるいは工程の一部を海外子会社に移転することにより技術比較優位を維持管理する組織である。海外子会社は海外市場を細分化しグローバルな規模で利益を最大化するため、価格の差別化を図る。つまりMNCは内部化方式により海外子会社を制御しシステム全体の技術比較優位を活用、維持するものである。

 MNCにとって内部化市場を維持するためR&Dを行い比較優位を形成する。そのためにはR&Dの集権化が必須であり市場失敗を回避するように技術に関する意志決定を本社に集中する。

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