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国際貿易と技術革新 3 技術移転とPLC仮説モデル

3章:技術移転とPLC仮説モデル

-自動車産業の貿易構造と産業内分業体制-

 

 本章では、典型的技術集約的産業である自動車の組立、部品産業の貿易構造について、日本における産業工程間分業体制の現状を明らかにする。次に日本の自動車産業における技術の比較優位が、主に産業内の分業プロセスによるものであることをPLC仮説モデル及び産業内貿易に関する指数により明らかにする。

要点1.国際的伝播普及モデルPLC仮説は技術の比較優位が先進国の輸出創出と後進国の   キャッチアップを導くとするが、産業間分業体制はヴァーノンの製品技術自体の    比較優位よりもむしろヘライナー/アバナシープロセスサイクルモデルを支持する   ものと考えられる。また、雁行形態論からも工程の効率化による後進国のキャチ    アップを説明しうる。

要点2.その証左として日本では軽工業等比較劣位技術の技術移転と輸出が多く、これは産   業間貿易として表わされる。一方、精密化学、機械、輸送機器、自動車等の技術集   約産業では工程間貿易(産業内分業の貿易)が多い傾向がみられ、最近は、この傾   向が加速化している。

要点3.輸出特化指数、グルーベル・ロイド指数(産業内貿易に関する指数)比較優     位度指数、国際競争力指数他を用い、技術比較優位産業は産業内貿易の傾向が高く、

  水平性が高い事。技術比較劣位産業は産業間貿易の傾向が高く、垂直性の高い事を導  く。

1.PLC仮説モデルの修正過程とヘライナー/アバナシーモデル

 ヴァーノンPLC仮説モデルは製品自体の技術革新が比較優位を形成し国際間の貿易、海外投資を通じて普及、拡散する技術の伝播モデルを提示した。

 多国籍企業による著しい寡占状態が描く普及曲線にイメージされるこのモデルは様々な制約;技術の労働節約、コスト節約面また技術自体がブレークスルーか、改良技術か、更に革新技術が旧技術に対しどの程度代替性が有るのか。特に技術寡占、すなわち多国籍企業による技術保守、機密維持による制約から修正を受ける事になる。 

 実証的にはPLCを製品技術自体のライフサイクルと工程技術のライフサイクルとに分類し日本の自動車産業の工程サイクルの比較優位を論じたアバナシーや、また労働集約の製造工業品において、多国籍企業は導入期にあるものをその製造工程の一部が労働集約的であれば国際分業を企業内でおこない、工程の一部を後発国へ海外移転することを指摘して、PLC仮説モデルが最終財レベル段階まで至る場合が希であるとしたヘライナー/シャープストンの指摘がある。 

 特に多国籍企業の製造業分野での途上国への海外投資が、技術先端部門の中で労働集約的作業工程であり

(1)ヘライナーは作業工程を海外子会社を介して行う企業内国際分業を

(2)シャープストンは現地地場産業を介して行う産業間国際分業を理論化した。

 また貿易の中間財、特に部品貿易に注目し工程サイクルを中心に論じ、この工程サイクルモデルは、後にプロダクトプロセスサイクルモデルとしてヘイズにより理論化 された。

 尚、多国籍企業の技術移転について製品自体の技術は移転する機会が少なく、技術移転で一般的なライセンス契約を通じて技術が移転するのは主に工程技術であるとの分析がある。 製品部門別に特化した部門内貿易が、企業内国際取引として一般化している。

 この企業内国際取引の理論としてヘライナーは、国際貿易の主な担い手は多国籍企業であり、国際貿易のパターンを決定する主な要因について多国籍企業の市場行動分析に重点を置いている。

この理論に対応してR&D投資と企業内国際取引との関連を捉えるラルは新たなPLC仮説に対し以下のような指摘をしている。ラル及びアバナシーはR&Dの分析から技術革新は主に新製品や既存製品の改良による製品革新(Product Innovation)と製品に関する工程革新(Process Innovation)が存在し、この二つの革新は全体としての製品ライフサイクルの過程で標準的生産工程に効率上から特化する。

 PLCの誘発する直接投資は工程間貿易に依る生産工程へのタイムラグと需要のタイムラグが適応する場合に生じ、PLCを受け入れた企業が工程特化すると、製品革新よりも工程革新に重要度が増し、工程が製品の特性を決定する。

 アバナシーは、国際貿易に関する産業構造や競争の基盤を革新する変革を複合技術と

呼び、この変革力は製品工程と製品と市場の結合関係によるとしている。 尚、アバナシーは、特に日本の自動車産業の競争優位について分析してその工程間の結合度と工程効率の高さと工程システムの柔軟さを指摘している。

 

2.日本の自動車産業の産業工程間貿易取引

 

  日本の自動車産業はその生産量の約50%を輸出する(’8796)代表的輸出産業であるが、その競争優位は主に工程間の比較優位にあることが指摘される。

  日本の自動車産業において、組立(Assemble)企業が開発デザインインプロセスし、多くの関連部品メーカーを従えて部品の製造と供給を外注するが、米国においては組立企業自体が部品を生産し加工、組立するシステムを採用している。

 ここで指摘されるのは部品製造と言う中間製品工程が分業体制を採ること、また米国企業の内注と日本企業の外注システムの違い、更にその工程分業の国際的展開の差違であるがアバナシーの先の指摘に符合すると考えられる。

 ここに日本自動車産業の製品品質評価の概要を掲げる。(表3-1

1)上掲論文では組立メーカーと部品メーカーの結合に重点を置き、部品納入時の品質管理の厳格さにストレスを置いている。

 この工程プロセスの改良と効率化を製品等量曲線モデルで表すと以下のようになる。旧製品を米国のプロセス、新製品を日本のプロセスに示しうる。尚、PLCの観点では要素集約度のうち、当初は資本集約、後期は労働集約に移行する。 

    図3-1)新旧製品の要素集約度相違

 

3.産業内貿易指数と技術集約度

 産業内貿易の比率の高さと技術集約製品、本稿では技術比較優位要因の大きさとの間には正の相関関係があると仮説した場合に、ここで産業内貿易指数としてグルーベル=ロイド(Grubel&Lloyd)方式を用いて仮説を明らかにしたい。 

Grubel&Lloyd指数は、i財についての産業内及び産業間貿易の程度を示し、0に近いほど産業間貿易の度合いが高く、1に近い程、産業内貿易の度合いが高いことを示す。

 

       Grubel&Lloyd指数;‖Ti=1-Xi-Mi/Xi+Mi

                              ii 財の産業内貿易指数

             Xii 財の輸出額

            Mii 財の輸入額

 以下、製品を国連標準貿易統計分類(SITC)に沿った分類により、その産業内貿易の同指数を表す。 化学工業製品(5類)原料別製品(6類)雑製品(8類)で産業内貿易の比率が高く、これら比較劣位の産業、特に原料別製品産業や軽工業などの資本集約的中間財において産業内貿易が盛んである。反面、機械及び輸送機器類(7類)の技術集約的産業では産業間貿易の比率が高い。

             (表3-2)産業内貿易動向

 この産業内貿易と産業間貿易の対比において製品別の水平分業度、すなわち産業内貿易においては垂直貿易が、また産業間貿易において水平分業がとくに企業内工程間分業の盛んな事が指摘される。

4.雁行形態理論からのアプローチ

 赤松要('56)は「新興国産業発展の雁行形態」他において、戦後日本の産業発展の先進産業国の技術摂取とその追跡発展の形態を論じ国際分業における動態理論を論じ、後に小島清('70 により理論発展を遂げた。PLC仮説及びアバナシーモデルに先駆けて、日本の産業発展に於ける先進技術のキャッチアップと生産工程の効率化の過程を説明し、

1)各産業が、輸入代替のプロセスをへて、生産、輸出する過程

2)消費財から生産財へ、またさらに高度生産財へと生産の高度化の過程を論じた。

特に、生産の能率化のプロセスを基本型とし、生産の高度、多様化を変形型と呼び、日本の貿易;当初比較生産費においては比較劣位の製品を輸入する事から、生産方法の改善、生産能率の向上、コストの低下を待って資本蓄積が行われ、より資本集約的生産が可能になるにつれ比較優位に進展する過程を説明する。

 その意味で日本の産業発展は、製品技術の選択、生産技術自体より生産工程効率化により比較優位を構成できる産業への特化等に依ると考察される。

 *尚、雁行形態理論による産業の生産量の盛衰曲線は,  対数放物線    Logarithmic parabola )で以下のように表される。

        log y=C+(log a)x+(log b/2)x2

         1.拡張段階;生産量の成長率が逓増する段階

       2.成長段階;生産量の成長が逓減する遅い成長段階

       3.衰退段階;生産量の絶対的低下

  の諸段階に分類される対数曲線を描くとモデル化された。

 

   

      

(注) このプロトモデルはホフマン(W.G.Hoffmann'55)の英国貿易研究1700-1950Translated by 

      W.O.Henderson(習熟曲線モデルの構築者)にある。

   

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